「レバチオ」と「アドシルカ」
バイアグラの成分であるシルデナフィル、シアリスの成分であるタダラフィルがED(勃起不全・イーディー)以外の病気の治療薬として使用されていることをご存知でしょうか?シルデナフィル、タダラフィルは「肺動脈性肺高血圧症」という病気の治療効果があることがわかり、シルデナフィルは2008年に「レバチオ」という商品名、タダラフィルは「アドシルカ」という商品名で日本においても製造が承認されました。用法用量はレバチオが1回20mgを1日3回投与、アドシルカが1回2錠(40mg)を1日1回投与となっています。
肺動脈性肺高血圧症とは
肺高血圧症とは肺動脈の異常や左心系心疾患、低酸素血症などにより肺の動脈圧が上昇することで引き起こされる病態を指します。収縮期圧が30mmHg、平均圧が20mmHgを超えた場合を肺高血圧症と定義しています。健常な方だと安静時に平均肺動脈圧が15mmHgを超えることはなく、加齢による変化があった場合でも通常20mmHgを超えることはありません。肺高血圧症の症状としては、息切れや鼻血、めまい、胸痛などがあります。この肺高血圧症のなかで肺動脈の異常により心臓から肺への血流が悪くなることで生じ、死に至ることも多い難病が肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension:PAH)です。その頻度は我が国では約6000人と稀な病気です。
肺動脈性肺高血圧症にPDE-5阻害剤が有効な理由
ED治療薬であるバイアグラ、レビトラ、シアリスは陰茎海綿体で勃起に関与するPDE5(ホスホジエステラーゼ5)と呼ばれる酵素の働きを阻害することで血管を拡張させ、血流量を増やすことによって勃起不全を改善させるというお薬です。実は肺の血管にもPDE-5が存在しています。レバチオ、アドシルカもPDE-5阻害剤ですのでED治療薬と同じくPDE-5の働きを阻害することで肺動脈の血流を改善させ、肺動脈圧を下げる作用があります。つまりこれらの薬は作用する部位が異なるというだけで、血流を改善させるメカニズム自体は同じものなのです。このようにPDE-5阻害剤はED改善効果以外の疾患に対しても効果を発揮します。そもそもシルデナフィルは当初、心臓の薬として開発されていたという経緯もあります。PDE-5阻害剤はもしかすると我々がまだ知りえない効果を秘めた薬なのかもしれませんね。