プロペシアが効かない時は
プロペシア(フィナステリド)とは、AGAの治療を促す医薬品として効果と安全性が認められた、米国医薬品メーカーのメルク社が開発した世界で初めての「飲む育毛剤」です。AGAとは、Androgenetic Alopeciaの略で「男性型脱毛症」の意味です。遺伝や男性ホルモンの影響などが主な原因と考えられており、抜け毛が進行し生え際や頭頂部の薄毛が目立つようになります。 原因はその他にも、加齢・ストレス・食事・生活習慣なども関わっているとされています。AGAの人は国内で1,000万人以上といわれており、そのうち何かしらのケアを行ったことのある人は650万人との調査結果があります。
プロペシア錠1mgを1年間投与した場合、個人差はあるものの改善がみられた方は58%、また、改善まではいかなかったものの、進行しなかった方の割合は98%にも及びます。しかしネットなどで検索すると、「耐性が怖いから2日に1回という飲み方をしている・プロペシアが効かなくなってきた・耐性がついた・10年以上は効かない」などというような口コミがあります。プロペシアには効かない人や効かないタイプがあるのでしょうか。
プロペシアの効果と薄毛の原因
プロペシアの主成分は「フィナステリド」で、元々は前立腺薬として開発が進んでいましたが、研究していくうちに男性ホルモンの働きを抑えることが分かり、その後AGA治療薬としても承認されました。薄毛の主な原因は男性ホルモンのDHT(ジヒドロテストステロン)で、このDHTは薄毛で悩む男性の脱毛部位の頭皮に通常より多く確認されています。男性ホルモンであるテストステロンが5α還元酵素によって変換されることで、DHTが生成されます。
毛髪は毛母細胞が分裂を繰り返し、新たな毛髪を生成し成長していく「成長期」、毛母細胞が成長し切った毛髪から次の毛髪を生成するための変動準備をするための「退行期」、そして毛髪の成長が完全に止まり、毛母細胞から分離している状態の「休止期」とあります。この休止期に入った毛髪は自然に抜けるのを待っている状態となり、毛母細胞は次の毛髪を生成するための準備へと働きを切り替えていきます。これらは「ヘアサイクル」と言われ、6年程度の周期で毛髪は生え変わるのですが、DHTが毛乳頭細胞に存在する男性ホルモン受容体と結合すると、成長期にある毛髪に対して退行期及び休止期に移行する信号が出されます。その結果、毛髪が長く太い毛に成長する前に抜けてしまうので、毛髪が薄く、細く、短くなってしまうのです。そのため、DHTが毛髪に作用すると寿命が短くなり1年未満で抜け落ちてしまいます。
プロペシア(フィナステリド)はAGAの原因であるDHTを生産させるのに必要不可欠な5α還元酵素を阻害することでDHTの生成を抑制します。
プロペシアの効かない原因
プロペシアは長期服用することでAGA患者の90%以上がAGAの進行を抑制、もしくは改善できるという臨床試験結果が出ており、アメリカはもちろん、日本の厚生労働省でも承認されています。しかし、プロペシアを服用しても効果を得られなかったという方も数%います。効果を得られなかった方には様々な原因があると考えられます。大前提として、プロペシア(フィナステリド)に高い発毛効果はありません。現状生えている毛髪を維持するための、いわば守りの治療をする薬剤です。
まず体質に合わないといったケースがあります。一部の症例で遺伝的にフィナステリドが効きにくいことが知られています。
また、一般的にAGA治療は効果が安定してくるのに約6ヶ月かかると言われています。そのためプロペシアは最低でも6ヵ月以上の連続服用の後に効果判定を行います。服用期間が短いと十分な効果は得られませんので6ヵ月は必ず連続服用するようにしてください。
逆に、長年服用したことで効果が安定してきたことを「効果が出なくなった・耐性ができた」と勘違いしてしまうこともあります。これは長年服用した結果、ヘアサイクルが正常に戻り服用開始した序盤にあったような分かりやすい改善・変化が現れなくなったことを過剰に考えてしまうことで起こります。AGA治療をしていると少しの変化に敏感になりがちですから、ずっと続けているのに変化がない、ということも深く考えてしまい、効果が現れなくなったと思い込んでしまう…。しかし、実は正常に戻りその状態で安定しているため服用を止めてしまうと悪い状態にまた戻ってしまいます。この点は注意が必要です。
AGAの症状が進行し生え際や頭頂部の毛髪が全く無い状態では、毛髪を作り出す毛母細胞が弱っている可能性があります。毛髪は毛母細胞が死なない限りヘアサイクルを繰り返し新たな毛髪を作り出してくれますが、この毛母細胞が弱っているといくらプロペシアを服用し5α還元酵素の働きを阻害しても効果は得られません。
その他、フィナステリドは5α還元酵素のⅡ型を阻害する薬剤であり、もしもAGAの原因がⅡ型の5α還元酵素でなくⅠ型の5α還元酵素の場合はフィナステリドでは思ったような効果が得られないことがあります。
以上のような場合、フィナステリドよりも効果の高いザガーロ(デュタステリド)や、ミノキシジルを使用するようにしましょう。デュタステリドはフィナステリドのおよそ1.6倍の効果がある成分です。デュタステリドであれば、5α還元酵素のⅠ型・Ⅱ型両方を阻害することができます。ミノキシジルはフィナステリド成分と同様に日本皮膚科学会が公表するAGA治療のガイドラインでAランクに位置付けられています。Aランクの治療というのはガイドラインの中では最高のランクで「行うことを強く勧めることができる」位置付けにあります。
クリニックや病院などの医療機関からプロペシアを入手する場合、偽造品を処方されることはありませんがフィナステリドを主成分としたプロペシアのジェネリック医薬品などを個人輸入やネット通販で入手した場合に偽造品を手にすることが起こり得ます。ネット通販や個人輸入代行などで販売されている医薬品は約6割が偽物という調査データがあります。当然、偽物を服用しても効果が得られませんし、場合によって重篤な副作用が起こる可能性もあるため、医薬品は専門のクリニックや病院で処方を受けましょう。