勃起のメカニズムとインスリン抵抗性
正常な勃起が起きるには性的な刺激を受けると脳から脊髄へ、脊髄から末梢の陰茎まで信号が送られて陰茎海綿体の血管内皮細胞より一酸化窒素(NO)が分泌されます。これが陰茎海綿体の平滑筋の中でサイクリックGMPという神経伝達物質を産生し、血管平滑筋を弛緩させ陰茎海綿体の動脈は拡がり血液が流れ込みます。スポンジ状の海綿体は流れ込んだ血液をぐっと吸い込み、大きく膨らみます。
メタボリック症候群などでインスリン抵抗性がある人は血管内皮機能が低下しNOの放出能が低下している可能性が大きくそのためにEDを合併していると推測されます。
バイアグラとメトグルコ併用投与によるED改善効果の研究
そこでバイアグラとインスリン抵抗性改善作用があるメトグルコ(塩酸メトホルミン、糖尿病薬)を用いてその改善がみられるか行われた研究です。糖尿病でなく、インスリン抵抗性があり、かつEDである男性30人を対象としています。バイアグラ+メトグルコ群が17人、バイアグラ+プラセボ(偽薬)が13人で研究を行っています。EDの評価はIIEF5を用い、インスリン抵抗性はHOMA-IRを用いています。開始後2カ月からバイアグラ+メトグルコ群で優位にED機能改善を認めており、プラセボ群は変化がありませんでした。
この研究結果からメトグルコはバイアグラと併用し長期投与することでED機能改善をさせることがわかりました。バイアグラと併用でなくメトグルコ単剤での長期投与でED機能改善効果が見られるか、また他のインスリン抵抗性改善薬のチアゾリジンを投与するとどうなるのか、研究が待たれるところです。ED治療薬自体も血管内皮機能への作用が知られております。またメトグルコの作用機序は膵臓や肝臓、消化管など多岐にわたります。本当に血管内皮機能の改善によるものなのか、もしくは他の機序によるED機能改善効果なのか、こちらに関しても研究が待たれるところです。メトグルコは非常に安価な薬剤でアメリカ等では糖尿病治療の第一選択薬とされている薬剤です。本当に効果があれば安価で大勢の方のED治療に使用できるかもしれません。